2013年7月11日木曜日

中林忠良先生 特別授業

7月5日(金)この日は中林忠良先生の特別授業が行われました。


今回、中林先生は自身の銅版画の版を2枚持ってきてくださり、実際に刷りを実演していただきました。
その様子をレポートします◎


「この作品は、僕がみんなと変わらない年の時に作った版なんだ。」
そう言って見せてくださった版は、中林先生が大学3年生の時に作ったという版。
まだ、銅版画を始めたばかりで、何をどうして良いのかわからない中、試行錯誤をしながら作ったという作品です。


まず、版をウォーマーで温め、インクをローラーで乗せていきます。
溝が深くてインクが詰まらない場合は、チップでインクを詰めて、ローラーでインクを版全体に均一に乗せます。


「これは最近気付いたんだけどね、新聞紙で余分なインクを取っておくと、
あとの作業が楽なんだ。」
インクを満遍なく版に乗せたら、新聞紙を版の上から被せて抑え
余分なインクを取ります。
この行程を4~6回します。こうする事で、寒冷紗をあまり汚さない上に、版が長持ちするそうです。
特にメゾチントの版の持ちが違うんだとか◎

随分刷ってないから、どんな風に(当時)刷っていたのか分からないなぁ」
と笑いながら仰る中林先生。
インクを新聞紙で取ったら、今度は寒冷紗と人工絹を使って余分なインクを
取っていきます。
コツはあまり力を入れず、インクを横に払っていく様に取り除くこと。


 仕上げに、あい紙で余白の部分に残ったインクの油分を取っていきます。
ここで、ワンポイント。
「拭き戻し」という作業をします。
あい紙で油膜を取った後、綺麗な寒冷紗で溝に詰まったインクを引き出してあげます。
皺のないように丸めた寒冷紗を持ち、版を優しく撫でます。
そうする事で、刷り上った時の銅版画の硬い表現がほんのりと柔らかくなるそうです。
プレートマークを綺麗に仕上げて、プレス機へ・・・。


「これは植物の種から根が増殖していくイメージで作ったんだ。」と仰る先生。
イメージの中には広島原爆のきのこ雲のイメージも入っているんだそうです。


2枚目の版はメッキ加工がされた版。
この版では雁皮刷りを見せてくださいました。
メッキ加工された銅版は、加工されていない銅版に比べて倍長持ちするんだそうです。
まず、インクを詰める前に、雁皮紙を版のイメージサイズにあわせて切っておきます。
雁皮紙を水に浮かべると水を吸って伸びるので、少しだけイメージサイズより小さめに切っておきます。
「雁皮は養殖が難しいから、自生した物から皮を採取して雁皮紙を作るんだ。」
と雁皮についてのお話もしてくださいました。


雁皮が切れたら、先ほどと同様に版にインクを詰めていきます。
インクを詰めたら、水の入ったバットに版を沈めてから雁皮を水面に浮かべ、
掬い上げます。
雁皮と版の間に水があるうちは少し雁皮を動かす事ができるのでここで微調整します。

 
雁皮の位置が決まったら、ウェスで水分を取り、水で溶いたノリを刷毛で雁皮に均一に載せます。
ノリを乗せたらウエスでノリの余分な水分を抑えながら取り、プレス機で刷り上げます。


じゃぁ、誰か僕の版を刷ってみない?」

      

名乗りを上げたのは4回生リトグラフの池田君銅版画の林田さん!
中林先生みたいに刷れるかな?


緊張しながらも、二人とも真剣にインクを詰めています。


二人がインクを詰めている間に4回生銅版画の李さんは、中林先生に作品を見ていただきました◎


★刷ったものを先生の見本と見比べてみよう!★

「ちょっとインクをふき取りすぎちゃった」と話す林田さん。
先生と同じ行程で刷ってみたけど、細やかな加減が難しい!

池田君は初めて刷ったのに合格◎林田さんは合格に到らず・・・
「でも勇気を出して刷ったから、君には僕の刷ったものをあげるね」と先生。
池田君の刷ったものと見本にサインを書いて2人に贈ってくださいました◎ 


銅版画の刷り方から道具の豆知識や先生の学生時代のお話など、貴重なお話を聞く事が出来、充実した特別講義となりました◎
中林先生、ありがとうございました!

版画コース副手の久保田

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