2014年7月31日木曜日

待ちにまった中林忠良先生の特別講義(夏)!!

蒸し暑い毎日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
ブログ記事を書くのはお久しぶりな、銅版3回生の森 あかねです!

本日、7月18日(金)は銅版教室で中林忠良先生が特別授業をしてくださいました!
なんと中林先生は刷りの実演もしてくださるそうです!
とても貴重な授業なので銅版コースの生徒だけではなく、木版、院からも生徒が集まり、授業を受けました。

今回刷りの実演に使う版は中林先生が32歳の頃に作った版だそうです。

私たちが普段使う版は銅の色ですが、先生の版は銀色でした。
これは表面がメッキ加工されているからで、加工をすることによって、100枚までしか刷れない版が200枚まで刷れるようになり、長期保管していても版の変色などがなくなるそうです!
私も版をいつかメッキ加工したいなぁ。

さぁ、中林先生の実演が始まります。
みんな手にメモを持ち、先生が説明してくださる言葉を一生懸命に書きとめます。

まずは雁皮刷りをするための雁皮と呼ばれる薄い和紙を銅版のサイズに合わせて切ります。
この際に忘れてはいけないのは、雁皮の特徴です!
雁皮は水に浸けるとサイズが広がるので銅版よりも小さめに切らなければいけません。
雁皮が切れたら、次はインク詰めです。



版をヒーターの上に乗せて暖めると、ローラーであらかじめ練っておいたインクをのせてゆきます。

ローラーを早く回せばインクが取れ、ゆっくり回せばインクが多く付着します。

今回使ったインクはシャルボネのブラック55985という物、シャルボネのインクの中でも黒がくっきりと出るそうです。
作品の雰囲気によってインクを使い分けるのも重要なのですね。
版にインクがまんべんなくのったらヒーターから下ろし、インクを取る作業に移ります。

私はインクを取る際に寒冷紗を使っていましたが、中林先生はその前に新聞紙で版を上から押さえて余分なインクを取っていくそうです。
理由を尋ねると
「作業が楽になるし、第一に寒冷紗が勿体ないからね!」とにこやかに答えて下さいました。
なるほど…ザ・もったいない精神!見習います!

新聞紙を使う行程を6回程繰り返した後は、寒冷紗(かんれいしゃ)人絹(じんけん)と呼ばれる人工絹を使って、まだ残っている余分なインクを取っていきます。


寒冷紗で丸い饅頭を作ってインクを取ると上手くとれるんだよ。

と、先生は寒冷紗を二枚重ねると丸く成形し、インクを払うように取っていました。

先生の手が淀みなくスピーディーに動いているのを見て、どれだけの数の版を刷ればこんなに滑らかに刷れるのかと、驚きが大きかったです。

あらかたインクが取れた後は、つるつるとしたあい紙でインクの油膜を取り除き、最後に拭き戻しという行程をします。
綺麗な寒冷紗でもう一度版の表面を優しく撫でてあげる事で、詰まったインクが空白の部分に少し移り、作品のアウトラインや絵の境界線が少しぼやけ、作品が柔らかい表情になるそうです!
自分の作品にも是非取り入れたい技法ですね!


インクを詰め終わったらプレートマークを綺麗にして、雁皮を版にくっつける作業にうつります。
銅版を水を張ったバットの中に沈めます。(今回のインクは油性なので水につけてもインクは落ちません)

ここで雁皮の登場!
ツルツルした面が表です。
よく間違えるんですが、銅版に向かった面を表にします。

雁皮を静かに水に浮かべると、下に沈んでいた銅版で雁皮をすくい取ります。
この時に親指で浮いている雁皮の位置を調節するとやり易いですね。
中林先生はあっという間に雁皮をすくいとっていました。
早い上に水で広がったにも関わらず、雁皮は銅版にピッタリのサイズでした。
すごい…。


雁皮をくっつけれたら、ウエスで水気を取り、水で溶いた糊をハケで雁皮の上に広げてゆきます。
その後また水気をとり、プレス機で圧をかけ、刷り上げます。
ぺろんと表に返した作品のなんとも綺麗な黒に学生からは「おおおおおおおぉ。」という歓声があがりました。



すぐに先生が「じゃあ、誰か2人ぐらいに版を刷ってもらおうかな。」と言われ

「「はい!!!」」

と即座に手を挙げたのが、銅版コース4回生の杉浦さんと私でした(笑)
こんな貴重な体験は中々出来ないと思い、手を挙げましたが、先に杉浦さんが刷っている間中ずっと緊張で手汗が大量に出ていました。

中林先生の行程をおさらいするように慎重に刷っていきます。

先生の版はベタの面が綺麗な版だったので、拭き取り過ぎずに真っ黒に刷れているか心配でした。

ぺろーん。
上手く刷れたでしょうか…?


刷れた自分たちの作品を、中林先生の刷った作品の隣に置き「ここは薄かった、拭き取り過ぎだね。」と先生が両方を見比べながらアドバイスをして下さいました。

私も杉浦さんもドキドキしながら刷っていましたが、先生から「合格。」の一言を頂き飛び跳ねながら大喜び!


最後に先生が作品の下にサインをして下さり、私たちは刷り師(imprimer)として自分が刷ったものにサインする事ができました!!


少しの時間でしたが中林先生の特別授業はとても面白く、緊張感があり、勉強になりました!
貴重な時間をありがとうございました!


版画コース3回生の森

2 件のコメント:

  1. 分かりやすいレポートですね!よい経験ができ良かったですね。写真もあって楽しく見せていただきました。有難うございました

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    1. 読んで頂きありがとうございました!
      これからも授業で学んだ経験を分かりやすくレポートしてゆきたいと思います。
      コメントありがとうございました。

      森 茜

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