2011年9月17日土曜日

没後30年 稲垣忠信 展


没後30年 稲垣忠信 展

9月19日[月]〜9月24日[土]
10:00〜18:00(19日 23日 24日は16:00まで)

http://www.osaka-art.jp/
大阪市中央区大手前3-1-43 府庁別館(南館1階)パスポートセンターの上

後援 大阪芸術大学


絵本と一点の銅版画       高橋亨                                                                                       
 三十年は永いが、稲垣忠信のことを今もときどき思い出すのは彼の一点の銅版画と、創作童話の絵本「HA.ジーメのたび」がぼくの手許にあるからでもある。その本の童話と絵は彼が検査のために入院した病室から、生まれてまもない長男あてにはがきに書き送ったもので、没後それを本にした奥さん(竹鼻野菊)も「NOGI.クーコかあさん」として作中に登場する。HA.ジーメはもちろん長男()だ。小鳥の姿を借りて子の成長と家族の愛情を描いた明るい絵と文である。
  一点の銅版画はごく小さい画面で、自宅の壁に掲げてある。斜め上のほうを見上げる女性のまなざしがひたむきでありながら優しい。信仰する者の横顔のようだと思っていたのだが、その作品の題名は「しもべ、ききます。主よ、お話ください。」というもので、彼はクリスチャンであったことを最近になって知った。作者が小さな画面に刻んだ思いは、うかつなぼくの目にも通じていたのだった。
  稲垣忠信はリトグラフ、銅版など版画を主にしながら油彩、水彩等にも豊かな才能を見せ、大学卒業後の十年間に六百点あまりの作品を描き、天に召された。  
(大阪芸術大学名誉教授・美術評論家)



稲垣 忠信(1947~1981
1970年       大阪芸術大学卒業 卒業制作グランプリ
     卒業後学校に残り、後輩指導と制作活動に没頭
1972年 室戸市展褒章   1974年 高知県展新人賞
1975年 関西展天王寺画廊賞  高知県展褒章
1977年 高知県展褒章   1978年 室戸市展無鑑査
1979年 室戸市展20周年記念大賞
画廊みやざき、丸ビル特設会場、高知市金高堂書店等で個展、グループ展多数 TAO造形団(田中健三主催)出品

 衣食住、金銭、出世に無関心で、ただひたすらまじめに生き、最後まで黙々と制作し続けた。出会った当時、TV,電話も無く画材以外はほとんど何もない質素な生活で驚いた。弱っても自転車と徒歩で通院し、最後まで車に頼ることは無かった。痛いつらいと文句も言わず、残していく者たちを気にかけていた。最後はすべてを神にゆだねて彼の生き様同様、天上へ静かに旅立った。これからを嘱望されながら若い日に召された彼を偲び飽食、便利さに慣れすぎた今の私の生活を省みたい。 
(竹鼻野菊)

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