2014年8月12日火曜日

筆見学ツアー

はじめまして、版画ブログ初登場の銅版4回生の杉浦です。
台風がいなくなって暑い毎日が帰ってきましたが、みなさん被害のほう大丈夫でしたか?

日本列島に台風がやってきた少し前、8月5日愛知県豊橋市にある、わたしの祖父の家元「杉浦製筆所」筆ツアー見学に行ってきました。
山本先生が以前から筆づくりを見てみたいとおっしゃっていたので、来てください!
と言い続け念願叶いました!


豊橋筆は幕末から脈々と伝統を受け継ぎ、歴史と品質が高く評価され「伝統工芸品」の指定を受けています。
市内には筆を作っている工房がいまも100軒ほどあり、多くの伝統工芸士さんがいます。
みんな筆の制作過程を見るのは初めて!
まずは専務の方の説明を聞きます。
ショーウインドウには大きさも毛質も目的も違うさまざまな筆が並んでいます。
人毛のものでも赤ちゃんの初めて切った髪の毛と、成人した人の髪の毛では柔らかさが全く違いました。
中でも一番高価なものは、山羊の最高峰の少量しか取れない首元の毛で作った大きな書筆90万円もします!!!
全員その値段に驚きを隠せません!


[オオカミの毛皮]
筆の毛には様々な動物の毛を使っていますが、そのほとんどが中国から輸入したものです。
今は規制が厳しく、輸入するのも大変なようです。
1種類だけで筆を作ったり、何種類も混ぜて作ったりと用途やものによって
使い分けます。


筆作りには16の行程があります。
その全ての作業を職人さんは一人でこなします
大きな製筆所では分担して作業するところもありますが、杉浦製筆所では筆づくりを受け継いでいくためにも、全ての行程を覚えて伝承しています。

職人さん一人一人のペースで作業が進んでいくので、作業場ではみんな違う作業をしています。


私は小さい頃からよく遊びに来ていましたが、職人さんのやってる事がみんな違うので、てっきり分担しているのだと思っていました。
じっくり説明を聞いたのは初めてだったので驚きの連続です!


筆作りの過程はどれも重要なものばかりですが、中でも特に重要な「毛もみ」という作業が見学時、丁度行われていました。
作業場とは別室で、籾殻の灰で毛に含まれる脂を取り除く作業です。
ここで脂がきちんと取り切れていないと、墨の含みが悪くなり良質な筆は作れません。


[面相筆の毛を束ねる行程]


[毛の選定]



[様々な動物の毛を混ぜる行程] 

職人さんによって大きな筆を作る方、羊毛だけの筆を作る方など担当があります。
筆作りの16の工程は変わりませんが、やはり種類によって
毛の混ぜる塩梅など少しずつ変わっていきます。
その細かな作業にレシピはなく、全て職人さんの感覚でやっています。
本当に一つ一つの行程が丁寧で、時間と手間がかかっています。


職人さんたちは、朝の8時から一日中自分の作業台に座って作業していて、はじめの数年は座り続ける事に慣れるのが大変だといいます。
皆さん長く働いている方ばかりなので淡々とこなしていますが、わたしたちには到底できない至難の業です。


別の作業場に移り、わたしたちも仕上げの糊づけを体験させてもらいました。
職人さんは一日に何百本もされているのでとても早いですが、はじめてのわたしたちは四苦八苦。


口に糸を加え、糊のついた筆に巻き付けクルクルと筆を回し糊を取り除きます。
見よう見まねでやってみるものの、力の強さ、糊の取る量、やはり簡単にはいきません。
それでも、「さすが芸大生、器用だねー」と褒めてもらいました!
自分で仕上げた筆はプレゼントしていただきました。


帰りには、筆ストラップ日本画の筆もお土産にもらいました!
全ての工程を見終え、改めて筆作りの深さと大変さを知りました。
1本の筆にかかる労力と時間、技術を考えたら、高級筆も安いもんだな~と思います。
版画で筆を使うことは少ないですが、モノをつくる者としてとても勉強になりました。
そして、これからはもっと筆を大切に扱おうと思います。

個人的には、みんなに豊橋の街製筆所のことを知ってもらえて大満足です。
幼いころから知っている方たちですが作業工程を見て、改めて尊敬です。
いろんな要求に応えてくださった製筆所のみなさん、ありがとうございました!!

版画コース4回生の杉浦

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